東坡易伝

坎為水

「翠霞の易サロン」にご来訪ありがとうございます。

 こちらの記事では、『東坡易伝』での坎為水の解釈をのせていきます。蘇軾の解釈って、たまにすごく歴史の一場面をうつしたようなものがあるのですが、こちらはその最たる例かもです。

全体の意味

 蘇軾の坎のイメージを一言で云うと「小田原攻め」みたいな感じがあります。

 まず、八卦の坎については、水は柔らかくても様々に形を変えてどこまでも遠く険しい中まで入りこんでいくところが、「陰につつまれた陽」の形によく似ている――としています。

 なので、坎(険しい)が水に当てられているのは、険しいところに流れ込んでいく水――という理由だとしています(ふつうは険しいところに溜まっている水――という解釈が多いかも)

 そして、坎為水では、六つの爻がそれぞれ険しい中でも進んでいく水みたいな姿になっています。九二・九五は中にあって陽なので、なかなか頑丈な要塞みたいに攻め落とされません。六三・六四は、それぞれ九二・九五に付くようにして粘ります。初六・上六は、やや遠巻きにみつめています(この様子が、小田原の北条氏と、その周りの支城っぽくないですか……)

初六

初六:習坎、入于坎窞、凶。
象曰:「習坎」入坎、失道凶也。

爻辞:険しい城に頼って、むしろ状況が険悪になってしまうので、良くない。

小象伝:「険しい城に頼って、むしろ状況が悪くなる」というのは、九二との盟を捨てたため。

 初六は、やや遠いところにいるので、九二が大変そうなときでも、「いや、私は援軍は出せません……。だって、かなり遠いし……」みたいな感じで、みずからの城で粘るつもりでいます。

 ですが、ここで九二を捨ててしまうと、かえって全体として追い込まれるので、むしろ不利になっていきます……。

九二

九二:坎有険、求小得。
象曰:「求小得」、未出中也。

爻辞:坎にはふたつの要塞があって、こちらは小さい支城がいる。

小象伝:「こちらに小さい支城がある」のは、中になっているから。

 九二は中にありますが、陰爻なのでみずからあまり動かずに、まわりの支城が味方してくれるだけ――という状態です。さらに、九五とは応になっていないので、九二・九五の堅城どうしが背き合っています。

 九二は、みずからの堅い城に頼って、近くで比になっている六三を引き入れています。でも、九二・六三にふたつでぎりぎり粘っているだけかもです。

六三

六三:来之坎坎、険且枕、入于坎窞、勿用。
象曰:「来之坎坎」、終無功也。

爻辞:外も内も険難だらけなら、内の険難に依っていた方がいい。しばらく粘るだけになってしまうが、ここの城だけでは堪えられない。

小象伝:「内も外も険難だらけ」なので、いずれにせよ抜け出せないが。

 六三は、後ろには九二の堅城があります。一方で、前には迫ってくる相手がいるので、内側(奥)にある堅城(九二)に頼るようにして粘ることになります。でも、九二と一緒に囲まれてしまうため、険難から抜け出すのは難しい……みたいになります。

六四

六四:樽酒、簋貳、用缶、納約自牖、終無咎。
象曰:「樽酒簋貳」、剛柔際也。

爻辞:酒壺ひとつ、円い器がふたつで、いずれも素焼き。窓からこっそり入れるけど、それを咎められることはない。

小象伝:「酒壺ひとつ、円い器がふたつ」とは、六四と九五の間柄。

 六四は、九五の堅城にくっつくことを選びますが、陰の位に陰爻なので、あまり力がなくて、わずかばかりの礼品(酒壺ひとつ、円い器ふたつ)しか送れません。

 さらに、いずれも素焼きの器で、窓からこっそりと入れるほどの略礼しかできないですが、険難の中なので、お互いに信頼していて、九五から咎められることもありません(樽:酒壺、:円い器、:素焼きの器、牖:窓)

九五

九五:坎不盈、祗既平、無咎。
象曰:「坎不盈」、中未大也。

爻辞:険しさで足れりとしないで、さらに盤石を求めるので、悪いことはない。

小象伝:「険しさで足れりとしない」というのは、中にあっても甘んじないこと。

 九五は、やはり中にありますが、陽なので“みずから動いてさらに頑丈にしよう”としていきます。なので、六四はわずかな礼物でも出してくれて、さらに盤石になっていきます(原文の「祗」は「足らせる」です)

 あと、蘇軾は陽爻は強いというより、「みずから動く」という性質を重視してみている気がします。

上六

上六:係用徽纆、寘於叢棘、三歳不得、凶。
象曰:上六失道、凶三歳也。

爻辞:荒縄と荊棘いばらで守っているが、三年ほどすればいずれ潰されてしまうので、良くない。

小象伝:上六はひとりで守っているが、三年ほどで敗れることになる。

 九五は険しい中でほかの支城を引き入れていますが、上六はそれを断って、みずからひとりで守りを固めます。なので、「徽纆(罪人をしばる荒縄)・叢棘(棘のある草)」などで固めて守りますが、やはり一人なのでいずれ潰されてしまいます……。

 こんな感じで、蘇軾の坎は、険しい中での険城に依っている人たち――みたいになっています。蘇軾って、坎みたいな凶とされがちな卦でも、ただ耐えて待つだけじゃなくて、周りをみて自在に答えを捜している感じが好きだったりします。

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翠霞
周易が好きなので、いろいろな易の魅力を感じられるようなサイトにしていきます♪中国文学だったり漢服なども好きです

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