雑談

あなたの易は爻派?卦派?

「翠霞の易サロン」にご来訪ありがとうございます。

 こちらの記事では、周易の占い方って、どんなスタイルがあるのかについて紹介していきます。周易って、実は大きく分けると、卦を重視する派・爻を重視する派・混合型の3タイプに分かれている気がします。

 そして、それぞれのスタイルで、よく用いる理論が違っているので、これを知っておくだけでも自分に合うスタイルをみつけやすくなるかもです。

(この分類は、わたしが思いついただけなので、実際はもっと分類不能なものがあったりします。あと、周易の基本用語はどうしても使ってしまうので、分からないときはこちらの用語集をみていただけると嬉しいです)

易の用語集 「翠霞の易サロン」にご来訪ありがとうございます。  こちらの記事では、周易のよく出てくる用語を解説していきたいとおもいます。易っ...

 というわけで、さっそく行ってみます(占例は、基本的にすべて三浦國雄『易経』から意訳して引用してます)

卦を重視

 まずは、卦だけで占うスタイルです。こちらの魅力は、とにかく基本重視&素朴なところです。

 ある温泉旅館に嫁いできた女性の体調を占って、沢山咸が出ました。この卦だけでは、どこが悪いというわけでもないのですが、「咸」は感じるなので、気づかいが多すぎて疲れているというのがありそうです。そこで、私(易占家の黄小娥)はご夫婦だけでの生活をすることをすすめました(沢:若い女性、山:若い男性)。

 わずかに沢山咸だけでも、全体では咸(感じる)なので「気の遣いすぎ」、さらに沢・山のセットなので「若い夫婦での生活」みたいに、八卦・六十四卦の意味だけでみていくスタイルです。

 もう一つ、卦だけで占っている例をみてみます(こちらは、紀藤元之介『易学尚占 活断自在』245頁より)

いままでの家がだんだんと狭く感じるようになってきたので、引っ越すべきか占ったところ、山沢損から雷天大壮になった。これはどうやら、今はお金がかかっても(山沢損)、引っ越した先では下卦が沢(ぐずぐずの水辺)から天(きっちりと綺麗に整えられている)になるので、住みやすくなる――として引っ越して、やはり正解だった。

 こちらも「損(一時的にお金がかかる)」から「大壮(とても盛ん)」になっているので、引っ越した方がいい――みたいな感じになっています。あと、上卦も抑えつけるように閉ざされている山から、動きやすい雷になっているので、やはり広くなった感があります。

 こんな感じで、八卦・六十四卦の意味を覚えておけば、すごく基本的なものだけを組み合わせて占える&自由度がとても高いのが、こちらのスタイルの魅力だとおもいます♪

(ちなみに、一つめにあげた例では、六十四卦をひとつだけ出して変爻はそもそも出さないスタイル、二つめの例では、六十四卦をふたつ出しているので、変爻というより六十四卦ふたつの流れで占っています)

爻を重視

 つづいては、爻を重視するスタイルです。こちらの魅力は、周りの状況などがやや細かく出ることです(私はどちらかというと、こっちに近いタイプなのですが)

 後漢の順帝の妃が、まだ後宮に入ったばかりのころ、その後のことを占って、坤為地から水地比になった。このとき、坤為地の五爻が変爻だったので、坤(すべて陰なので、後宮の女性たち)の中でも五爻(王)ということで、実際に皇后になった。

 ちなみに、坤為地の五爻の爻辞は「黄裳元吉(黄色い裳は、とても良い)」、水地比の五爻の小象伝では「目立つところで居並ぶ良さは、正・中を兼ねているから(顯比之吉、位正中也)」というふうになっていた。

 もはや周易の教科書のような完璧な解釈です……。まぁ、卦を無視しているわけではないけど、坤の中でも五爻(王)のようなところで、しかも正・中などの爻の配置も良くて、爻辞(実は爻の配置に基づいている)の良くて――みたいに、周りの状況をふくめて解釈しているのがバランス良くて好きです。

 爻の関係とかを入れていくと、周りの状況としっかり重なっている実感が得られるのが、すごく安心感がありませんか(私の好みがすごく入ってますが。こんなに綺麗な例はあまり無いです)

混合型

 というわけで、さっきまでの卦重視型と爻重視型は、実はけっこう混ざっていることが多いです(というか、むしろ多くの占例は混合型です)

 なので、混合型の中でも、とりわけテクニカルな例をみていきます。

春秋時代の陳の厲公は、みずからの子の将来を占わせて、風地観から天地否が出てきた。ある博識の官人が、それを見てこんなふうに占った。

「風地観の四爻が変爻になっていて、爻辞では“国の光をみるようにして、王の客人になる”とあります。風地観は、土の上を吹いていく風ですが、その風が天になっているので、風は高いところに昇っていくということでしょう。

 さらに、“国の光をみる”というのは、その高いところで天の光に照らされる様子。どうやら風で種が運ばれて、山の上で大きな木に育つ――でしょうか。風に飛ばされる種は、きっと異国に行きつくのでしょう。あと、その庭門には、金や絹などがたくさん積まれているはずです」

 まぁ、これは実はもっと長くて異様なほど複雑すぎるので、かなり略していますが、八卦の移り変わり(風が天になる等)も入っていれば、風地観の爻辞もふくまれています。

 ちなみに、「その庭門には、金や絹などがたくさん積まれている」は、天地否の天(金属のように澄んでいるもの)と地(土のように包みこむもの)というふうに、之卦をみています(天地否って、卦そのものは閉塞の意なのですが、ここでは全然そういう感じが無いです)

(余談だけど、私はこれはスリリングすぎて怖いです笑。できる人は全然いいと思うけど。なんて云うか、この曖昧&奇怪さが周易の難しさな気がする。もっとも、周易の魅力だと思っている方も居るかもですが……)

不規則型

 というわけで、最後にいままでの分類にも入りきらないタイプを紹介しておきます。

 清代の紀昀(きいん)は、ある試験を受けたときに、その結果を占って沢水困の三爻だった。この爻辞には「石に苦しんで、棘のあるヒシに座っている。その家に入っても、妻がいないので凶(困于石、據于蒺蔾。入于其宮、不見其妻、凶。)」というものだった。

 これを別のひとにみせたら、たぶん無理だっただろうと云われたが、紀昀は「未婚のわたしには、妻うんぬんは関係ないです。むしろ、妻(並ぶもの)が居ないというのは、わたしが最も良いということで、石に苦しめられるというのも、二番目の者が石にかかわる名前なのでしょう」と云った。

 実際に、紀昀はもっとも上位で、二番目のひとは姓が石、三番目のひとは姓が米だった。(「棘のあるヒシ」というのは、ヒシの実のトゲが出ている感じが、米の字が八方にのびている感に似ているので)

 ……これは、爻辞を一応もちいているのですが、もはや“おみくじ的・字謎的”といいますか、わたしは真似できない&理論化できない系です。こういうスタイルは、実は中国の占例ではかなり多いです。

 北宋末の徽宗皇帝のころ、ある人が世のことを占って、火雷噬嗑の二爻が出た。爻辞は「肌に噛みついて鼻が沈み込んでいる。悪いことは無い(噬膚滅鼻、無咎。)」というものだった(噬嗑:噛みつく)

 これについて、外卦(外側の様子)は離(外向きに明らか)、二~四爻の互体は艮(城壁などの閉ざすもの)、さらに互体の艮は東北でもある。また、外側にあるはずの離(南)よりも内側に艮(東北)が来ているということは、南のほうまで東北の物が入ってきている様子――。

 しかも、爻辞の「鼻」は鼻祖(始祖)という語があるので、おそらく東北の何かが、南にある宋国に入ってきて、城壁を越えてきて、皇家の祖も脅かされるだろう……。

 なんか、ちょっとぐちゃっている感がありますが、一応解説しておきます。外卦(外側の様子)の離は、「外向きに放出状態」みたいな雰囲気です。外側にある何かがめちゃくちゃエネルギーを放出してきている――というのが近いですかね。

 さらに、ここから急に後天八卦の方位について、互体の艮(東北)が、外卦(外側にあるもの)の離(南)よりも内側にある――みたいになって、外卦としてみると「宋の外側」、離としてみると「南にある国」みたいに、全然ちがう意味になります……。

 もう一つ、爻辞の「鼻」は「鼻祖(鼻:初のこと。もともとは漢代の四川方言)」として、しかも「悪いことは無い(無咎)」は無視しています……。爻辞の解釈が、さっきの困の「石に苦しみ、ヒシの実に座る(困于石、據于蒺蔾)」と同じく、かなり不規則です。

 というわけで、こちらの不規則型は、卦・爻どちらも混ぜて用いる混合型に、さらにおみくじ・字謎らしい雰囲気が入っているというか、とても奇怪で神託的――みたいなイメージがあります。

まとめ

 そんなわけで、すごく大まかにまとめてしまうと、実は周易には大きく四つのスタイルがあって、こんなふうになっています。

  1. 卦重視型:おもに八卦・六十四卦の意味をもちいています。変爻は全く無くても、いくつもあっても、あまり気にしないことが多いです(あと、けっこう連想重視かも)
  2. 爻重視型:おもに変爻だったり、爻どうしの関係で、周りの状況などを重ねていく感があります。爻辞と正・中・応・比などを分析的にみていることが多いです
  3. 混合型:卦・爻どちらも混ぜるようにして用います。ほとんどの占例は、実はこの混合型になっています(その中でも、爻重視・卦重視がありますが)
  4. 不規則型:いままでの三つに加えて、かなり爻辞を不思議なセンスで解釈していることが多いです(あまり理論性&再現性は無いのですが、とても直感的)

 この四つの型のなかで、なんとなく好みor分かりやすいと感じたスタイルを軸にしていくと、周易の解釈をかなり整理しやすくなる気がします(この他にも、まぁ例外はあるけど……)

 けっこう独特な記事になってしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。

ABOUT ME
翠霞
周易が好きなので、いろいろな易のスタイルの魅力を感じられるようなサイトにしていきます♪中国文学だったり漢服なども好きです

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