「翠霞の易サロン」にご来訪ありがとうございます。
こちらの記事では、周易のよく出てくる用語を解説していきたいとおもいます。易って、すごく独特の用語が多くて、かなり分かりづらいかもなので、なるべく初心者の方でもわかりやすいようにまとめてみます。
とりあえず、こちらの雷沢帰妹を例にしながらみていきます。

象について
まずは、象(陰陽・八卦などの配置)についてからです。
陰陽
易の基本とされる陰・陽は、すごくざっくり云うと、陽は能動的、陰は受動的みたいなふうになっています。
爻
上の写真での六本の横線のことです。陽爻は横線、陰爻は真ん中で切れている線であらわします。下から順に「初・二・三・四・五・上」といいます。初爻は民、二爻はふつうの臣下、三爻はやや力の強い臣下、四爻は大臣、五爻は王、上爻は隠遁者です。
八卦
爻を三つあわせて、全部陽だったら澄み切っている空(乾)、閉ざされた陰気の下からしだいに春の陽気が涌き上がってくる感があれば春雷(震)みたいなふうにして、八通りのイメージをあらわしたものが「八卦(八つの卦)」です。さっきの雷沢帰妹だと、震(雷)・兌(沢)が入ってます。
六十四卦
八卦をふたつ組み合わせると、六十四通りの状態になります。さっきの雷沢帰妹だと、上に震(勢いのある長兄)、下に兌(幼い妹)がある様子を「帰妹(若い妹の急ぎの婚儀)」みたいにしています(上にあるのを上卦・外卦、下にあるのを下卦・内卦みたいにいいます)
変爻・本卦・之卦
時間が経つと、陰陽が変わってしまう爻のことを「変爻」といいます。たとえば、雷沢帰妹の上爻が、陰爻から陽爻になってしまうと、雷沢帰妹から火沢睽になっていきます。このとき、もともとの卦(雷沢帰妹)を「本卦」、変わったあとの卦を「之卦(之:行く)」といいます。
雷沢帰妹(急ぎの婚儀)をして、そのあとに火沢睽(背き合う)になるので、性格が合わないところが多くて……みたいな感じですかね。まぁ、例として出しているだけですが。
ちなみに、変爻はかならず一本しか出ない占い方(六つの爻のどれが変爻かを決める)or変爻が全く無かったり幾つも出たりする占い方(それぞれの爻が変爻になるかを決めていく)があります。もしくは、変爻をそもそも出さずに、本卦の意味だけで占ったりもOKです。
互体
六つの爻のなかで、二~四爻・三~五爻をひとつの八卦としてみたときに含まれている卦を「互体」といいます。さっきの雷沢帰妹では、二~四爻の離(火)、三~五爻の坎(水)が含まれていて、それぞれ状況を補足している――みたいにすることが多いです。
さらに、雷沢帰妹の互体どうしを合わせて、上の坎と下の離で、水火既済(物事が終わってしまった)が含まれている――みたいにする用法もあるらしいです(雷沢帰妹の唐突な結婚は、既に沈んだ夕陽みたいにすべて周りに固められがちかも……とか云う感じですかね。あくまで解釈例ですが)
賓卦
ある卦を上下逆にして見たものが「賓卦(賓:相手側)」です。さっきの雷沢帰妹を上下逆にすると、風山漸(ゆっくりと婚儀をすすめる)になります。なので、相手側からみると、こちらの雷沢帰妹はあまりにも急すぎるので、もう少し順を追ってすすめてほしい……みたいなふうになります。
錯卦
ある卦の陰陽をすべて逆にしたものが「錯卦(錯:入れ違い)」です。さっきの雷沢帰妹の陰陽をすべて逆にすると、こちらも風山漸になってしまいますね……。
この錯卦は、今と真逆のことをしてみたらどうなるのかを示しています。雷沢帰妹(急ぎの婚儀)の真逆のことは、風山漸(準備を整えてからの婚儀)みたいな感じですかね。卦によっては、賓卦と錯卦が異なるときもあります。
中・正
これは、いずれも爻の配置についての評価です。二爻・五爻はそれぞれ下卦・上卦の真ん中にあるので、極端さが無くて良い――とされるのが「中」です。「中(二爻・五爻)」にある爻は、陰爻陽爻どちらも良い面が出しやすくなります。
なんとなくのイメージだけど、二爻(ふつうの臣)に陽爻があればみずから動く能臣、陰爻があれば慎重な落ち着きのある臣、五爻(王)に陽爻があれば雄邁な君主、陰爻があれば丁寧で抜かりない君主みたいにされていることが多いです。
もうひとつの「正」は、“陽爻が奇数(初・三・五)にあるとき&陰爻が偶数(二・四・上)にあるときは、それぞれの爻のキャラと場所ごとに求められる姿が合っている”というタイプの良さです。
奇数(陽の場所)では、どんどん動くタイプの陽爻が動きやすくて、逆に大人しい陰爻があると動きが足りません。でも、偶数(陰の場所)では、どんどん動いてしまう陽爻はむしろ余計なことをしがちなので、おとなしい陰爻の方が向いている――的なイメージです。
もっとも、三爻に陽があると臣下なのに動きすぎとか、四爻に陰があると静かすぎて力弱い……みたいなことも多いので、「正」だとしても、卦全体の雰囲気と合わないことも多いです。あと、初爻はまだ勢力が小さすぎ、上爻は世の外にいる感があるので、あまり正の恩恵が無いことが多いかもです。
ちなみに、三爻に陰があると動きが無さすぎ、四爻に陽があると五爻を脅かしがち……みたいにされることも多いかもです。
応・比
こちらは、陰爻・陽爻の関係についてです。応は、初爻と四爻・二爻と五爻・三爻と上爻で、それぞれ陰陽がセットになることです。雷沢帰妹では、二爻(陽)と五爻(陰)は応になっています。
比(ならぶ)というのは、応になる爻が無いときに、すぐ隣りの爻と陰陽セットになることです。雷沢帰妹では、四爻は初爻と応になっていないので、すぐ近くの五爻と陰陽セット(比)になりたがる……という感じです。
もっとも、本来の結びつきは応なので、お互いに応が無いときは“手近な比で妥協する”ということがありますが、本来の応がいるのに、手近な比で妥協するのは、あまり良くないとされることが多いです。
卦主
卦の主役になっている爻のことです(その卦らしさをつくっている爻というか)。八卦では、乾・坤・坎・離は真ん中、震・巽は下の爻、艮・兌では上の爻です。
六十四卦でも、それぞれ主役になっている爻があるのですが、これはけっこう不規則&諸説あります(水地比・火天大有などの五爻、山地剥の上爻、天風姤の初爻――みたいなのは分かりやすいですが)
やや複雑な例では、沢地萃の四爻&五爻(多くの陰爻をまとめているので)、山沢損の三爻&上爻(彖伝の「下を減らして上を増やす」というのが、三爻&上爻とされる)などがあります。
なんとなくのイメージだけど、彖伝で詳しく書かれている&小象伝でいい評価のある爻は、けっこう主役になりがちな雰囲気です(でも、八卦の主はそこそこ占いで出てくるけど、六十四卦ごとの主ってあまり占いでは出てこないかも。あと、彖伝・小象伝の解釈も色々あります……)
後天八卦
周易では、八卦を季節・方位などに重ね合わせることがあります。その組み合わせ方を「後天八卦」と云います。
(なぜ「後天八卦」かというと、伏羲がつくった先天八卦というのもあるのですが、実際の占いではほとんどこちらの後天八卦メインなので、このサイトは初心者向けということで、とりあえず後天八卦だけを紹介しておきます。後天八卦は、周の文王が作りました)
- 北(真冬):坎(ひんやりと冷たい水)
- 東北(早春):艮(まだ固く閉ざした感じ)
- 東(春):震(勢いよく育つ植物と、激しい春雷)
- 東南(晩春~初夏):巽(もったりと茂っている長い草)
- 南(真夏):離(ぎらぎらと明るい陽光)
- 西南(晩夏~初秋):坤(しだいに淀んで落ち着いてきた頃)
- 西(秋):兌(きらきらと嫋やかな秋草)
- 西北(晩秋~初冬):乾(高くて明るい空)
というわけで、象(陰陽や八卦の配置)については、よく出てくる用語はこんな感じですかね……。つづいては、辞(『周易』の本文)についてみていきます。
辞について
こちらもやはり雷沢帰妹の原文をみながら、解説してみたいとおもいます(でも、細かい意味とかはかなり端折ります……。爻辞はとりあえず五爻だけをのせました)
帰妹:征凶、無攸利。
彖曰:帰妹、天地之大義也。天地不交、而万物不興、帰妹人之終始也。説以動、所帰妹也。征凶、位不當也。無攸利、柔乗剛也。
象曰:澤上有雷、帰妹、君子以永終知敝。
六五:帝乙帰妹、其君之袂、不如其娣之袂良、月幾望、吉。
象曰:帝乙帰妹、不如其娣之袂良也。其位在中、以貴行也。
卦辞
上の例だと「征凶、無攸利(どこまでも進めてしまうと凶。いいことが無くなる)」のところです。この卦辞は、卦全体の説明をしていますが、ほとんどはあまりにも短くて、これだけでは何を云っているのか分からないことが多いです。
爻辞
上の例だと、「六五:帝乙帰妹、其君之袂、不如其娣之袂良、月幾望、吉。」みたいなのが、爻辞(爻ごとの説明)です。もっとも、こちらも「殷王の娘が嫁いでいく。その着物は妹ほど煌びやかではないが、満月のごとき姿でした」みたいになっていて、かなり謎の奇文みたいに感じますよね……。
彖伝
さきほどの例では「帰妹、天地之大義也。天地不交、而万物不興、帰妹人之終始也。説以動、所帰妹也。征凶、位不當也。無攸利、柔乗剛也。」までが彖伝です。
彖伝では、卦辞の解説をしています。もっとも、この解説というのが、かなりの曲者で、どういう雰囲気で読んだらいいのかがすごく悩まされることが多いです。
たとえば、「帰妹、天地之大義也。天地不交、而万物不興、帰妹人之終始也。説以動、所帰妹也(幼い妹が嫁ぐのも、天地の大きなめぐりなので、それが無ければ世も沈んでいくばかりだから、帰妹は人のあるべき姿のひとつ。幼い妹を喜ばせるために動くのが帰妹)」みたいに、良いことのように書かれています。
ですが、そのあとに「征凶、位不當也」みたいにあって、“卦辞「征凶(そのまま進めると良くない)」というのは、二~五爻の配置がすべて正ではないから”みたいな理由がついています。
これだけでも、「人情としてはもっともだけど、常道から外れているので良くない」なのか「人情としてはもっともだが、これを当たり前にするのは控える」程度のニュアンスなのかが分かれます(ちなみに、前者寄りが三国魏の王弼、後者寄りが北宋の蘇軾です。中国の人ですら、こんなふうに解釈が割れがち)
しかも「無攸利、柔乗剛也(良いことが無いというのは、三爻と五爻の陰が、どちらも陽爻を抑えつぶすように乗っているから)」というのもあります。
なので、帰妹は八卦どうしの組み合わせでみていくと「嫁いでいく幼い妹を喜ばせるために動く(兌:幼い妹の喜び、震:動く)」みたいな感じで、それなりに成り立つようにもみえるし、爻の関係でみてしまうと二~五爻の配置がすべて正ではない&陽を押し潰すように陰気が垂れこめている不穏さ――みたいにもみえます。
というわけで、彖伝って、八卦の組み合わせor爻の配置によって、卦辞を解説しているのですが、かなりいろいろな受け取り方ができてしまう複雑さがあります(なので、その人の価値観に似合う解釈が大切になってきます)
象伝
上の例では「象曰:……」になっているのを、象伝といいます。ちなみに、「象曰:澤上有雷、帰妹、君子以永終知敝」を大象伝、それぞれの爻ごとにつけられている「象曰:利幽人之貞、未変常也」みたいなのを小象伝といいます。
大象伝は、八卦の組み合わせで解説しています。ここでは「澤上有雷、帰妹(沢の上に雷があるのが、雷沢帰妹)」みたいな感じです。そのあとに一言「君子以永終知敝(賢い人は長期的な弊害もよく知っている)」みたいに解説が入ります。
小象伝は、爻の陰陽の配置によって、爻辞の解説をしています。さっきの「殷王の娘が嫁いでいく……(六五:帝乙帰妹、其君之袂、不如其娣之袂良、月幾望、吉。)」の解説として、「殷王の娘が嫁ぐときの着物の美しさは妹に及ばないというのは、陰爻で静かだけど、中にあって内実が豊かなこと(象曰:帝乙帰妹、不如其娣之袂良也。其位在中、以貴行也。)」みたいになります。
小象伝は、ほとんど中・正・応・比などを元にして、爻辞の解説をしていることが多いです。なので、彖伝で卦全体の解説をするときは、小象伝を要約した感じになっていることが多いとおもいます。
どうでもいいけど、小象伝をみていると、爻辞の独特な詩才に驚かされることが多いです(笑)
『周易』or『易経』
易の本文が書かれているものを『周易』または『易経』といいます。内容としては、さきほどの卦辞・爻辞・彖伝・象伝に加えて、繋辞伝(易の世界観などの説明。上下二巻があります)・説卦伝(いろいろなものを八卦に分類)・序卦伝(六十四卦の変化の順序について)・雑卦伝(六十四卦の一言解説)・文言伝(乾・坤のふたつについて)があります。
そして、これも難しいのですが、大象伝(八卦メイン)と小象伝(爻の配置メイン)が全然違う理論でみていたように、説卦伝(八卦メイン)or繋辞伝(易の根本思想)みたいに、かなり重視するところが違っていたりします♪
まぁ、歴代の人たちも、多少はどこかに偏りが出てしまうのは仕方なかった感があるので、自分なりに納得できる解釈が大事だとおもいます。
というわけで、周易の基本用語についてまとめてみました。かなり私の経験則みたいな解釈を入れてしまいましたが、周易の難しさはいろいろな解釈がありすぎることだと思うので、それぞれの方が納得しやすい説をみつけるきっかけになっていたら嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました。